令和2年1月17日、韓国釜山で開催されたIUGS(国際地質科学連合)の理事会において、千葉セクション(市原市田淵の地磁気逆転地層)が前期ー中期更新世地質年代境界のGSSP(国際境界模式地)に決定されました!
これにより、約77万4千年前~約12万9千年前(新生代第四紀更新世中期)の地質年代の名称が「チバニアン」と呼ばれることになります。GSSPは世界で72箇所目となり、日本では初めての認定です。
地球の歴史の1ページに日本の地名が刻まれる快挙です。
市原市のホームページを参考にチバニアンについて紹介します。
チバニアンってなに?
ジュラ紀や白亜紀などの地質年代は、化石や地層などの移り変わりにより、区分が決められています。チバニアンが含まれる「第四紀」という区分では、地磁気の逆転現象が境界となっています。この現象がよく記録されていることや地層が観察しやすい場所にあることから、地質年代の境界を最も良く示す「GSSP(国際境界模式層断面とポイント)」に認定され、チバニアンが誕生したのです。
チバニアンは、千葉時代という意味をラテン語にしたものです。
令和2年1月17日、国際学会で、今から約77万4千年前~12万9千年前の時代に、「チバニアン」という名称をつけることが決定されました。 これはジュラ紀や白亜紀といった地質年代の名称にチバニアンが並ぶという、日本で初めての出来事です。
今回IUGSは、千葉県市原市田淵にある地層「千葉セクション」を「GSSP(地質時代の境界を観察、研究するうえで最も優れた地層)」に認定。これにより、「カンブリア紀」や「ジュラ紀」のように、GSSPのある地名をもとに命名する慣例に従って、千葉セクションの示す地質年代がチバニアンと呼ばれることになりました。なお、同地層は世界で72カ所目のGSSPで、日本で認定されるのは初めてのことです。
下の図のように新生代の第四紀更新世の中期が「チバニアン」に決定しました。

チバニアンの時代とは
この頃の地球上には、原人がいたといわれています。また、この時代の終わりごろには、アフリカ大陸で現代の人類の先祖であるホモ・サピエンスが誕生しています。
チバニアンで何が見れるのか
私たちがコンパスを使うとN極が北を指すように、地球は大きな磁石として、現在の北極はS極に、南極はN極になっています。地球の長い歴史の中で、このN極とS極は度々逆転してきました。
残念ながら、目に見えて地磁気の逆転を感じることはできません。地層の中の鉄分には、当時の地磁気の向きが記録されています。この鉄分を調べることで、田淵の地層から、地磁気が現在の向きに移り変わる様子が観察できることが分かりました。
また、この地層の中には「白尾層」と呼ばれる火山灰層があります。これは、約77万年前に古期御嶽山が噴火した火山灰が降り積もったもので、正確な年代を特定する指標となりました。
なぜ市原市でみられるのか
なぜここで、このような貴重な地層が見られるのでしょうか。それを解明するには、房総半島の成り立ちを理解する必要があります。
① 大地の隆起
日本列島が現在の形になる前、房総半島は海の底でした。深い海底は、堆積物がきれいに積み重なります。

②地殻変動
一方で、日本列島は地殻変動の激しい変動帯に属し、海底で堆積した地層は、大地が隆起して地上に現れたのです

③養老川の浸食
こうして地上に現れた地層ですが、そのままでは平面でしか観察することができません。この地層の断面が露出して観察できる場所(「露頭」と呼びます)が現れたのは、市内を南北に流れる養老川が地層を侵食したためです。
こうした地球のさまざまな事象が重なり、世界でも数少ない貴重な場所となったのです。

国の天然記念物にも指定
この地層は、特に希少な地質鉱物として認められ、市内で初めて国の天然記念物にふさわしいとされました。これは、77万年前に起こった地磁気の逆転現象の前後の地層が容易に観察でき、さらに年代が特定された火山灰層によって見てわかる場所は、他に例がないことなどが大きな理由です。さらに、当時の環境を示す花粉やプランクトンなどの微化石が地層中に含まれていることも学術的に評価され、平成30年10月15日に国の天然記念物に指定されました。
チバニアンに行ってみよう!
チバニアンの場所
田淵会館(市原市田淵1165)から150m進んだところに駐車場があります。駐車場では、仮設トイレや地元の方の売店、自動販売機などがあります。現地にはトイレがありませんので、こちらですませましょう。
服装
長そで・長ズボン・長靴での見学がおすすめです。夏はヤマビルがいる可能性がありますので注意してください。
雨の日は要注意
川岸まで降りるため、雨が降って増水しているときには近づかないようにしましょう。
事前に学んでから見学へ
駐車場の一角にあるのは、チバニアンの時代の地層や当時の環境などを学べる「チバニアンビジターセンター」。
地磁気逆転の仕組みと地層の関係や周辺で見られる化石など、一帯の魅力をわかりやすく解説した展示と映像を放映しています。
地層を見学する際には、このチバニアンビジターセンターで事前に学習してから行くのがオススメです。
地層付近で感じる悠久の歴史
軟質な地層
川底を触ってみると、砂や泥が堆積した海底が隆起したため、比較的軟らかい地層となっていることがわかります。
貝の化石
川底には、ところどころ貝の化石が埋まっているのが見えます。これは、まさに約77万年前に海の底にいた貝なのです。
当時の生物の活動の痕
生痕化石せいこんかせきと呼ばれる、生物が這った痕や糞などの化石を観察できます。一見地味だけど、当時の生物の形だけでなく、どんな生活をしていたかがわかります。
素朴な疑問
地層の表面のところどころに穴があいてるけど、これは何?
77万年前当時の地磁気を調べるために、試料採取をした跡です。
地磁気が逆転すると何が起こるの?
実は、詳しくは解明されていません。ただし、地球の磁場が不安定な状況になるので、一説には携帯電話などの電波は使えなくなるともいわれています。過去360万年の間に地磁気は十数回逆転し、最後の逆転は田淵で確認された77万年前のため、いずれまた逆転すると見られています。田淵の地磁気逆転地層を詳しく調査することで、その時に備えることができるかもしれませんね。
最後に
ここは、貴重な地層です。絶対に削ったりしないでください。
また、地層の近隣地は民有地です。地元の方々のご理解とご協力で地層観察が可能となっています。近隣の方々に迷惑にならないように見学してください。
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